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2007年10月 2日 (火)

さんさしぐれ

9月の末から在宅患者さんの往診が毎日続きましたが10月2日の午前零時過ぎに安らかに息を引き取られました。

最初は本当に病院ではなくて良いのだろうか?家族や本人が却って苦しまないだろうか?と不安でしたが、病院から戻られた患者さんは凄くうれしそうでした。

往診に行くたびに、寝ていても僕の声には反応して目を開けてしゃべってくれました。今まで老夫婦2人だけだった部屋には息子さんと娘さんが集まり、傍から見ても家族が一つになっている感じで、当初心配した悲壮感もなく笑いが絶えない団欒をみることができました。

今まで様々な病院に行ったそうですが、医師評論家を自称するほど医師に対する評価は厳しい方だったようで病院嫌いだったそうですが、当院だけは気に入っていただいたようで、そのような方に”先生が一番だ!”と言っていただけたのは本当に光栄なことでした。

亡くなる前々日に看護師と一緒に往診した際、患者さんが三味線が得意で童謡が好きで今でも病床でうわ言のように歌っているのを見て、看護師が”ちゃんと歌っているところをききたいなー”とリクエストすると得意げに”さんさしぐれ”を歌ってくれました。狭い部屋に細いけれどしっかりとした発音で唄が響き渡ります。奥さんも、娘さんも、息子さんも僕も、看護師も皆笑いながら目からは涙が溢れていました。

それから翌日の午後までは呼吸状態は悪化しながらもうわ言のように歌ったり、好きだった機械をいじっているようなうわ言をしゃべっていたようで、特に苦しむこともなく夜中に眠るように亡くなられました。

さんさしぐれ”という童謡を僕は知りませんでしたが、看取った後に娘さんから有名なお祝いの歌だと教えていただきました。

http://www8.ocn.ne.jp/~shama/nippon-minyou/kasi/kasi050.html

”自分で自分の人生の最期を祝うように!そして家族の幸せを祝うように!先生や看護師さんを祝うように、お父さんがみんなに歌ってくれた”といってくださいました。

まるで映画のシーンのような胸に刻まれた光景でした。

在宅で亡くなることは今後の高齢化医療、末期医療の理想のように言われていますが、そのためには家族という輪がしっかりしていないと、いくら医療関係者が関わろうとも困難だと思いました。今回のことで”やはり医療は家族愛だろ!”と実感し、これからも自分の信じた医療を地道につづけるしかないと思いました。

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コメント

ブログを拝見して、涙が溢れました。
私も、短期間ではありましたが医療に携わった人間です。情景が思い浮かびました。
結局、信頼関係でしかありません。塩川先生の実直さクリニックのスタッフの思いやりが伝わったのですよね。
人間としての根本的な家族愛を信念にしている先生のポリシーに改めて感動です!
お互いに、前を向いて歩もう!!ファイト!

投稿: とよたま | 2007年10月 6日 (土) 00時02分

久しぶりにブログを拝見して、先日亡くなった知り合いと重なり、涙が溢れました。
生まれた時からずっと世話をしてくれた人でした。やはり自宅で最後の時間を過ごし、家族に看取られて逝きました。
いくつになっても、譲ちゃんと呼び、子ども扱いしていました。でも、いつも私の味方でした。大切な人がまた、逝ってしまいました。

信頼できる先生に出会い、家族に囲まれ、お祝いの歌を歌いながら逝かれたこの方は、お幸せでしたね。

投稿: しましま | 2007年10月 9日 (火) 19時27分

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